水戸家庭裁判所 事件番号不詳 決定
本籍 茨城県○○市○字○○○○○○番地
住居 同所
無職 ○川○雄 昭和十四年十月二十三日生
主文
少年を中等少年院に戻して収容する。
少年を昭和三十四年十月二十二日まで少年院に収容することができる。
理由
一 、少年は当裁判所の昭和二十九年七月二日附初等少年院送致決定により○○○○学院に入院し、昭和三十年十月二十日左記事項の遵守方を誓約して仮退院を許され即日肩書住居の母の下に帰住し保護観察所からも右遵守方につき指導された。
(1) 一般遵守事項
(イ) 善行を保持すること
(ロ) 犯罪性のある者又は素行不良者と交際しないこと
その他二項目。
(2) 特別遵守事項
(イ) 母方に落着き受持者には何事も打明けて相談し、その指示をよく受けて決して勝手な行動をとらないこと
(ロ) 決して無断外出外泊をしないこと
(ハ) 正業についたら真面目に働くこと
(ニ) ウソをいつたり人に迷惑をかけないこと
その他三項目。
二、少年は帰宅後○○製作所○○工場の要職に在る担当の○野○○夫保護司の温情ある配慮により、前記○○工場の下請負をしている○○市○○○千百○十○番地○○興業株式会社の雑役に雇つて貰い、昭和三十年十月二十四日から○○工場研究所の水力実験室に通勤し暫らくの間は真面目に働き好感を持たれていたようであつた。
三、しかるに少年は昭和三十年十二月二十三日頃前記実験室の水銀百八十匁(価額二千八十円)を盜み、その後昭和三十一年一月四日に四百匁(価額四千六百六十円)、同月十五日に七百匁(価額八千百二十円)、同年二月二十日に二百匁(価額二千三百二十円)、同年三月十日に八十匁(価額一千二百円)、同月十三日に百二十匁(価額一千三百九十円)等連続して水銀を盜み、それ等を古物商に売却して映画見物、買喰い、たばこ代等に費消していた。そして更に同月十五日の正午の休養時間中に水銀百匁を盜もうとしたところを同室内に張込んでいた職員に逮捕されて同日解雇された。
四、なお、その間少年は素行が良くないような交友関係もあり前記のように犯罪を反覆して成績がよくないので水戸保護観察所が同年三月二十三日に少年を引致する途中、少年は水戸駅で逃走してしまい同夜又も日立工場の塀を乗り越えて前記実験室に侵入し水銀若干量を盜んで五百円で売却し、更に同月二十五日夜前同所から水道蛇口(砲金)を盜んで二百十五円で売却し、又同月二十九日夜も前同所から水銀若干量を盜み出して五百円で売却するなどの非行を重ね、その間同月二十三日以後同月三十一日午後六時頃○○警察署員に逮捕されるまでの間に自宅には二晩帰つて寝ただけで外泊していた。
前記の各事実は、少年に対する仮退院証書(裏面は誓約書)の写、水戸保護観察所長の保護観察経過状況報告書、○島○夫保護観察官の少年、○な事○川○ナ(少年の母)及び○野○○夫保護司等に対する各調査書、西野義満家庭裁判所調査官の少年、○川○ナ及び○林○等に対する各調査報告書、少年の当審判廷における供述などにより、これを認める。
五、以上のように少年は仮退院後僅かに二箇月余りにして前示遵守事項に違背して保護司等の温情味溢れた厚遇をじゆうりんし、犯罪を重ねてしまうなど行状が極めて悪く、又母親にも指導監督の熱意及び保護能力が乏しく、鑑別結果も少年院の矯正教育の続行を必要としている。
彼之綜合考覈するに少年に対しては目下のところ保護観察をもつて、その更生を図ることは困難と思われ、この際再び少年院に戻して教育訓練を受けさせる必要性があるものと認める。
よつて本件申請はその理由があるから、犯罪者予防更生法第四十三条第一項、少年審判規則第五十五条及び第三十七条第一項、少年院法第二条等の規定に則り、なお将来仮退院した後の保護観察期間を存置する必要があるものと認められるので、期間につきその点をも考慮して主文のように決定する。
(裁判官 花岡学)